借金を滞納した場合の取り立て規制について貸金業法21条を解説!
「消費者金融から借金をして、もし返済に遅れたら怖い取り立てがあるのではないか?」、「家に押しかけられたりして、隣近所に知られる?」など、未だに消費者金融に対してこんなイメージを抱いている人が少なくありません。
しかし、現在は法律によって厳しく規制されているため、テレビドラマのような怖い取り立てシーンを現実に見ることはありません。
貸金業の法律は、取り立て行為が社会問題化するごとに、規制を強めてきた背景があり、2010年6月に完全施行となった貸金業法においても、ヤミ金の罰則規定、取り立て行為の規制はより一層厳しくなっており、違反した場合は非常に重い処分の対象となります。
貸金業法改正によってさらに規制が強化された項目
- 夜間に加えて日中の執拗な取立行為など、取立規制を強化
- 貸付業者が、借り手等の自殺により保険金が支払われる保険契約を締結することを禁止
- 公正証書作成にかかる委任状の取得を禁止。利息制限法の金利を超える貸付けの契約について公正証書の作成の嘱託を禁止
- 連帯保証人の保護を徹底するため、連帯保証人に対して、催告・検索の抗弁権がないことの説明を義務付け
- 貸付けにあたり、トータルの元利負担額などを説明した書面の事前交付を義務付ける
貸金業法改正で規制が一層強化されたのは上記の項目ですが、取り立て行為に関するものは、「夜間に加えて日中の執拗な取り立て行為を禁止する」というものです。
今までは取り立て行為に関しては、正当な理由が無ければ、朝8時~夜9時までの時間に限られており、その間の督促(請求行為)に関しては具体的に基準を設けていませんでした。
しかし、今回の法改正により、日中の執拗な取り立て行為が禁止となったことで、貸金業協会では自主規制として督促の電話をするのは1日3回までと定めています。
3回と言うのは、3回債務者と延滞管理に関して話した場合を指すのか、3回電話連絡(不在着信で直接本人と話してないことも含む)した場合なのか、具体的には決められていません。
しかしながら、法改正によって貸金業者は延滞の督促電話をする回数まで制限されることとなり、数ある法律の中でも、貸金業法は非常に厳しい法律と言えることは確かです。
貸金業法は取り立て行為に関して細かく規制がされています
消費者金融は貸金業法に則って営業しなければならず、貸金業法における「取り立て行為の規制」に違反すると罰則を科せられます。
【貸金業法21条1項(取り立て行為の規制)】
貸金業を営む者又は貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者は、貸付けの契約に基づく債権の取立てをするに当たって、人を威迫し、又は次に掲げる言動その他の人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない。
貸金業法第21条1項は具体的な取り立て行為を1~10項目まで出して、それらの行為を禁止としていますが、根本にあるのは、「人を威迫し、人の私生活もしくは業務の平穏を害するような行動を禁止する」というものです。
これは債権者側が貸金業法に従って問題ない督促行為をしたとしても、債務者側から「威迫を受けた」または、「平穏な私生活を害された」と感じられたのならば、取り立て行為の規制に引っ掛かります。
その為、貸金業者側は延滞管理等の督促電話をする場合においても、常に債務者に対し気を遣わなければならないとも言えるのです。
さらに、この規制を基に金融庁が具体的な規制行為を定めた「ガイドライン」を策定しており、ガイドラインに違反すると、金融庁から業務停止命令などの厳しい処罰が下されます。
そのため、消費者金融はガイドラインに即した取り立て用のマニュアルを作成し、従業員に徹底させています。
なお、現在の消費者金融の業務はすべてコンピューターで管理されているため、電話による取り立ての内容はすべて記録されており、違法な取り立てがあった場合はすぐに判明します。
- 9時~20時以外の時間帯に電話や訪問はできません。
- 電話をする場合は1日3回以内に制限されています。
- 債務者宅へ訪問する場合は2名まで。
- 債務者の勤務先への訪問は厳禁。
- 督促における暴力的な態度や大声など、威圧的な言動は厳禁。
- 債務者以外の第三者に契約の事実を知らせることはできません。
- 郵便物の送付や電話の取次においては、社名を表示できません。
- 正月やクリスマス、祭日などに取り立てはできません。
- 債務者の親族、縁者に返済の肩代わりを要請できません。
【延滞の督促書(請求書)の書式についても細かな規定があります!】
消費者金融等の貸金業者では、支払を催告する書面(督促状)を送るのにも、細かい規定が決められています。
- 貸金業者の商号、名称又は氏名及び住所並びに電話番号
- 当該書面又は電磁的記録を送付する者の氏名
- 契約年月日
- 貸付けの金額
- 貸付けの利率
- 支払の催告に係る債権の弁済期
- 支払を催告する金額
- 支払の催告時における当該催告に係る残存債務の額
- 支払を催告する金額の内訳(元本、利息及び債務の不履行による賠償額の別をいう。)
- 書面又はこれに代わる電磁的記録を保証人に対し送付する場合にあっては、保証契約の契約年月日及び保証債務の極度額その他の保証人が負担する債務の範囲
貸金業法21条第2項に定める、支払を催告するための書面には、上記の内容を記載しなければならず、催告書面に定められた内容を記載しなかったり、虚偽の内容を記載した場合には100万円以下の罰金の規定があります。
すなわち、もし自宅に督促状が届いて仮に1つでも未記載があれば、貸金業法違反となるのです。
消費者金融を滞納しても怖い電話などは来ません!
貸金業法では取り立て行為の規制が細かく決まっていることによって、消費者金融から返済の督促の電話が来たとしても、未入金の事実の案内と、いつ入金できるかの返答を求める程度になっています。
その為、そこで債務者が入金日の回答をすれば、その時点で督促の電話は終了します。当然、威圧的な言葉づかいなどは無く、どちらかと言うと債務者に気を遣って電話しているケースも多々あるぐらいです。
貸金業法における取り立ての基本的な考え方は、「平穏な私生活や就業を害するような言動をすることで、債務者を困惑させてはならない」ということです。
従って、取り立て行為によって恐怖を感じたら、即刻、業者への抗議と監督官庁への報告をすべきです。
ちなみに、法に則った取り立てを行っているのは正規の登録を受けている消費者金融でしかありませんので、闇金と呼ばれる違法な業者は当然、法を無視した取り立てを行うことがあります。
そのような業者から借入をしないことが威圧的取り立てを受けないための絶対条件となります。
業者からの電話は必ず出ましょう
基本的には、理由なく携帯や自宅以外に督促の電話をかけたり訪問することは法律で禁止されていますが、携帯や自宅の電話にかかってくる督促の電話を無視し続けていると、契約時に登録した職場などに連絡がいく場合があります。
先ほども説明したように、督促の電話で威圧的な言葉で脅されたりすることはなくいつ支払い出来るかの確認をして電話は終了します。また、その後督促の電話の際に伝えた支払い日まで督促の電話が来ることはありません。
周りに迷惑をかけないようにするためにも業者からの電話は必ず出るか、出れなかった場合はかけ直すようにしましょう。
違法な取り立てをされたら?
法律で規制されているにも関わらず違法な取り立てを受けた場合は警察に通報したり、弁護士に相談するようにしましょう。
住居侵入罪 | 勝手に自宅や敷地内に立ち入る |
恐喝罪 | 大声や大きい音を出して恐怖を与えるような言動をする |
業務妨害罪 | 職場に何度も電話や訪問をして仕事の邪魔をする |
器物損壊罪 | 物を壊す、隠す、落書きするなど |
不退去罪 | 帰るように言ってもしつこく居座る |
強要罪 | 「他社から借入をしてでも返済をしろ」など無理なことを行わせようとする |
監禁罪 | 債務者を閉じ込めて出られないようにする |
上記のような取り立ては犯罪です。もしこのような取り立てを受けた場合や身の危険を感じた場合はすぐに通報しましょう。また、「警察に通報しますよ」と宣言するだけで効果がある場合もあります。実際に通報するかは、その後の状況で判断しましょう。
弁護士に相談する場合は、債務整理をすることになります。債務整理を依頼すると弁護士が業者に対して債務整理の通知を出します。その通知を受理した時点で業者は取り立てをすることが出来なくなります。
債務整理とは、借金返済が出来なくなった場合の国が認めた法的な解決手段です。債務整理には「任意整理」「自己破産」「個人再生」「特定調停」の4種類があります。借入総額や経済状況によって自分に合った手続きの方法を選択します。
任意整理とは、弁護士や司法書士が裁判所を介さずに、返済が可能になるような条件を業者に交渉し、借金を減額してもらう手続きです。債務整理の手続きの中で1番利用されるのがこの任意整理です。
自己破産とは、支払い不能に陥った場合に裁判所に破産申立書を提出し、免責してもらうことによって全ての借金をゼロにする手続きです。しかし、自己破産では所有物で資産と見なされたものは没収されてしまう点が大きなデメリットです。
個人再生とは、裁判所に申し立てを行い、借金を減額してもらい生活を立て直すことが出来るようにする手続きです。簡単に言うと任意整理と自己破産の中間のようなものです。自己破産のようにすべての借金を免責にするのではなく減額してもらい、任意整理のように長期の分割支払いになります。
特定調停とは、裁判所に仲介してもらい返済額の減額を交渉することです。弁護士を通さない分費用が抑えられますが、自力で手続きをしたり資料を集める必要があります。また、手続きが遅れるとその間取り立てが続く可能性がある点がデメリットとしてあげられます。
どの方法を取ったとしても債務整理をした場合には個人信用情報に5~10年間金融事故情報として残ってしまいますが、どうしても返済が出来なくなった場合には有効な手続きです。
警察や弁護士に相談する以外の方法は…?
「警察や弁護士に相談するのは気が引ける…」という人はまず公的機関に相談してみるのも1つの方法です。
- 消費生活センターの相談窓口(電話のみ)
- 役所の法律相談窓口(電話・対面)
- 法テラス(電話のみ)
いずれの方法も基本的に無料で相談をすることができます。役所の法律相談窓口は相談可能日時が限られていますので各自治体のHPなどで確認しましょう。
また、法テラスは電話相談のみですが、提携の弁護士や司法書士を紹介してもらえる場合もあります。
弁護士に依頼すると費用がかかってしまいますが、最近では分割支払いに対応してくれる場合もあるので自分で手続きをするのが不安な場合は弁護士に依頼するのが得策です。
証拠は残っていたほうが有利!
違法な取り立てを受けた場合は、証拠を残しておきましょう。警察に通報した場合でも、弁護士に相談した場合でも有利になります。
証拠がない状態で通報した時に、業者に「そんなことはしていない」と言われたら警察も動くことが出来ない場合があります。しかし、ボイスメモや動画、張り紙の現物などが残っていることでそれが証拠となり警察が動いてくれる可能性が高くなります。
違法な取り立てを受けるようなことがあったら、取り立ての内容や日時を細かくメモしておくことも重要です。
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